SALLOW
神戸と言えば、旧居留地から栄町、海岸通りあたりを思い浮かべるが、JR元町駅から北に上がった山手側には神戸の歴史を物語る歴史遺産が点在し、散歩がてら回ってみると、また違った神戸を楽しむことができる。
特に兵庫県庁に隣接する兵庫県公館は僕の大好きな近代建築の一つで、館内には小磯良平や横尾忠則らの作品が鑑賞できる無料の展示室が設けられ、建物と共にレベルの高い文化体験が味わえる貴重な施設である。 一方、初代神戸市長の本邸に営まれた「相楽園」は、伝統的な回遊式の地泉に西洋の広場を取り入れた広大な庭園として、神戸市民のみならず訪れる人の多い人気の観光スポットになっている。 ぼくが、初めてSALLOWを知ったのは、昨年の秋、神戸の近代建築を巡っていて、初めて相楽園を訪れたときのことであった。 SALLOWは、相楽園の重厚な表門を出た緩い坂の途中にある。 官庁街と相楽園に挟まれたエアポケットみたいな場所に建つカフェは、まるでドラマのワンシーンのようにその場にしっくりと馴染んでいた。 古い民家をモダンな意匠でつないだ外観...そして、緩い坂道... カフェ好きなら絶対に気になるシーンだと思う。 建物は2階が発達した昭和初期のもので、ガラス障子に切られた桟の意匠が面白い。 一階は、黒く塗った壁面に大きくガラス窓をはめ込んだ構成になっていて、墨を流したようなステンドグラスの市松模様にとてもモダンな印象を受ける。 店の前の看板を確認して右手の扉から店内に入ると、暗い土間に裸電球とミニライトの小さな灯りが浮かび上がった。 土間には、アールヌーボー風の鉄のテーブルと黒い椅子が並んでいた。一段高くなった奥のフロアとはディスプレイ用の棚で仕切られ、奥にも大きなテーブルを置いた結構奥行きのある店内である。 この店のオーナーは、元々インテリアショップを経営していて、その延長で民家を改装したカフェをオープンしたのだそうだ。奥の壁際に並べられたドライフラワーや大きなガラス瓶、オールドフレンチのキャンドルなどは、インテリアショップさながらのセンスが生かされている。 店内に客はなし。ぐるっと見渡して中央のテーブル席に座ることにした。正面のガラス窓からは、官庁街の“あまりに日常な風景”が見えた。 壁に掲げられた白い花のようなオブジェ、神棚のような燭台など、ドキっとするインテリアもこの店の特徴かもしれない。黒く塗りこまれた店内に裸電球のほんのりとした灯りが醸し出す雰囲気も他にはない渋い味わいになっている。 お気に入りの本を読むために窓際の席を選ぶのもいい。ベンチシートに腰掛けて、ジャズのGBMに耳を傾けながら何時間でも本を読んでいられそうな気がした。 ちなみに店名のsallowは「シダレヤナギ」のこと。 シダレヤナギといえば、日本をイメージする植物の一つである。そのシダレヤナギが“sallow”と名前を変えるだけで、こんなにモダンでまどろんだ空間になるとは... 和とオールド・フレンチが癒合した坂道のカフェは、かなり面白い存在になりそうである。 ● SALLOW サロウ 神戸市中央区中山手通5丁目1-21 TEL078-360-5310 open:11:00~20:00 close:月曜日 http://www.geocities.jp/cafe_sallow/ ps. この日は“本日のプレート”を注文したが、イマドキのカフェ・ランチの感動はなく、コーヒーも“フレンチカフェ”とかで好みではなかったのが残念でならない。外観が最高にステキなので悔いが残るところである。
by browns_cafe
| 2008-10-05 00:39
| カフェ/喫茶店
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by browns_cafe
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