珈琲店 ISHIHARA
散歩は楽しい。
発見があって、出会いがあって、感動があって。 そんな散歩の途中で見つけた喫茶店は、古き良き商店街の風情にしっとりととけ込んでいた。 松原通は、かつて清水寺の参道として平安時代から栄えた通りの一つで、1200年以上もたった今も京都の庶民街としての人の行き交いが続いている。 「まるき製パン所」や“うすべに”で有名な「末富」がある通りといえば、あッと気がつかれる方も多いのではないかと思う。 珍元もこの通りの近くだし、以前紹介した「カフェ・ド・ガウディ」もこの通りに近い。 珍元に訪れたその日に、この珈琲店ISHIHARAに出会った。 ニューモードなカフェに目がいっていた頃は、全く気がつかなかったが、珍元あたりの昭和な店に馴染んでしまうと、どうやら視線そのものが“昭和フィルター”になるらしく、この日のISHIHARAは輝いていた。 開店は平成元年。 明治の頃先々代がこの建物で小間物屋を開業し、昭和になってから煙草屋に転業したことを人の良さそうなこの店の店主・石原さんに教えてもらった。 古い町家の端正な感じを残しつつ、珈琲店として綺麗にリノベートされた店内では、近所のご老人方が楽しそうにコーヒーを飲んでいた。 窓際の席に腰を下ろすと、格子越しに通りを行き交う人たちが映像のように流れていく。 コーヒーは、小川珈琲のショップブレンド。店のウインドウにも小川珈琲のプレートが掲げてあった。 ドリップで淹れられたコーヒーは石原さんの真面目な気質を感じる透明感のある美味しいコーヒーだった。 「美味しいですね。」と僕がいうと、 「ありがとうございます。豆が新鮮だからだと思います。お一人分でも2杯分淹れさせていただいています。この方が美味しくなるんですよ。」と笑顔が返ってきた。 僕がコーヒー好きなことを伝えると 「そうそう、先日、大阪の平岡さんへ行きましたよ。」と石原さんは奥の棚から一冊のスクラップブックを取り出した。 見事に整理されたスクラップブックには平岡珈琲のことが書かれた新聞の切り抜きが貼られてあった。 「私の唯一の趣味がこの新聞の切り抜きなんですよ。記事を集めて、いつか自分で足を運ぶ。・・あはは、こんなもんですよ」 と石原さんのちょっと恥ずかしそうな仕草にこちらも心が和んだ。 気分がいい。 社会人ならとうに定年を過ぎた年齢。むしろその長い人生経験が余裕に感じられる。 京都の庶民町も時代とともに様変わりする。しかし、石原さんのような人がいる限り、松原通の人の行き交いはきっと引き継がれていくのだと思う。 ● 珈琲店 ISHIHARA 京都市中京区松原通東中筋東入 TEL075-351-3956 open:9:30-18:00頃 close:火曜日
by browns_cafe
| 2010-03-20 15:08
| カフェ/喫茶店
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